人口減少する日本の未来を予測、ITとどう向き合うべきなのか

人口減少や少子高齢化が叫ばれる今日、労働生産力の低下は企業が抱える大きな問題となっている。労働力人口が減り続ける日本企業はどのような取り組みを行えばよいのだろうか。また今後日本が迎える未来はどんな時代になっているのか予測してみる。

2020.03.19 THU

人口減少する日本の未来を予測、ITとどう向き合うべきなのか

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これからの日本が直面する2025年問題

「2025年問題」についてご存じだろうか。現在約800万人存在する団塊の世代が、後期高齢者の年齢である75歳を迎えるのが2025年とされている。そう、人口減少が進み続ける現状に追い打ちをかけるように、国民の3~4人に1人が後期高齢者となる高齢化社会が到来するのだ。

さらにもうひとつ。2020年の日本の人口はおよそ1憶2600万人。2025年には日本の総人口は700万人近く減少し、反対に定年を迎えた65歳以上が増加して3500万人になると予想されている。後期高齢者と同じく、3人に1人は65歳以上。

この超高齢化社会こそが「2025年問題」だ。医療、介護の現場、社会保障費の増大、労働力の減少…すさまじい社会の変化がこれからやってくるのである。

社会の変化 労働力・人手不足

2025年には、生産年齢人口(国内で労働に従事できるとされる年齢の人口)にあたる15~64歳が7000万人まで落ち込むとされ、日本は労働人口の不足した社会になってしまう。絶対的な労働者数の減少によって各産業への人材の偏りは変わっていく。介護、医療への人材の移動が起こり社会インフラの営繕が必要となる。

下記のグラフを見てほしい。人口減少は始まっているが、実際には労働者総数は増加していることに疑問を持つ人もいるだろう。

これは高齢労働者と女性の参加比率の増加が大きな要因である。しかし、昨今話題となっている定年の延長については、定年が延びると一時的に労働者数は増加するが、人口減少によってやがて減っていく事は避けられない。さらに働き方改革で勤務時間が減少していることから、労働者数×年間就労時間で示される労働時間の総数はかなり減少するものと考えられる。

(参考:総務省 労働力調査 長期時系列データ)

近い将来の人手不足に企業はどう備えるか

これから人口減少が進むなかで、企業を維持し繁栄させていくためにはどのような取り組みをすべきだろうか。今の業務をより少ない人数で行える工夫をしていかなくてはならない。解決の方向性は労働生産性の向上であり、ITが主役になる企業運営を目指すことにある。具体的な対策を見ていこう。

・デジタルトランスフォーメーション(DX)を早期に行って備える

ITのさらなる進化形態として登場してきたIoT、AI、DB等のデジタルテクノロジーやICTを駆使して、既存のビジネスの形を変えていく。ICTは今後社会・経済システムへの活用が進んでいくので、現在の業務を理解している人が残っているうちに、デジタルトランスフォーメーションの体制を整備する必要がある。大手メーカーに依頼をするのも良いし、外部から人を入れてでも早めにこの体制を作ることが望ましい。

・IaaS、PaaS、SaaSを活用して工数削減

クラウドサービスを導入し、ハードウェアやOSの運用をサービス提供業者に委託するだけで運用工数を大幅に削減することが可能になる。運用の自動化でビジネスのスピード・確実性も向上し、特定の社員に集中していた専門的な業務は定型化されて偏りが解消。その分引継ぎや教育に使える時間も増える。クラウド化と運用の自動化により、現場への負担は軽くなるだろう。

いずれも本格的な人口減少になる前に完了させることが推奨される。

日本の今後を予測してみる

2025年までに社会に大きな変化が起こり、今からその対策をとって備えていけることがわかった。ではさらに先の未来はどうなるのだろうか。ここからは10年以上先の日本を予想していく。

20年代…AIの時代
AIを中心とした技術が一斉に進展する。


実現例:
① 初心者でも使える機械学習の基盤やAIソフトウェアの開発環境が普及・標準化される
② 危険な場所などで人の代わりに建物やインフラの点検を行うロボットの技術が完成
③ 飲食店や様々な業種で、顧客満足度を上げるために必須である「サービス」を、勘やセンス、経験を元に行うのではなく、科学的・工学的に追究して体系化し、個人・状況にあった最適なサービスを受けられるようになる

30年代…量子コンピュータの時代
新たな原理のコンピュータである量子コンピュータが現実になる。各種のAIやシステム部品(SaaSやPaaS)をもとにシステムの生成が可能になる。プログラマやテスター、運用といった業務からの解放がおきる。


実現例:
① AI技術等を活⽤したソフトウェアによるプログラムの⾃動⽣成、⾃動デバッグ、⾃動検証、⾃動テストが可能になることで、ソフトウェアの⽣産性が⾶躍的に向上し、世界中のオープンソース・ソフトウェアモジュールがワンストップで検索・ダウンロード可能になる
② AIやロボットと⼈間の関係について社会的に認められ、制度や法的整備が進み、機械と⼈間が共存する安定した社会・経済システムが実現する
③ AIが普及し、⼤半の業務を⾃動化することができるようになることで、現役世代の約30%が働かない社会となる

40年代…AIが人間の知能を超えていく時代
量子コンピューティング技術が普及し、人間では不可能と思われたレベルの計算能力が手に入るようになると予測されている。


2044~45年頃は「シンギュラリティ」を迎える時と呼ばれている。「シンギュラリティ」とは、AI(人工知能)の研究開発が急速に進み、発達したAIが人間の知能数を超えることで人間の生活に大きな変化が起こるという未来の概念・仮説である。提唱者のレイ・カーツワイル博士は、「2045年までにはシンギュラリティが到来する」としており、これは「 2045年問題 」と呼ばれている。

シンギュラリティを迎えた未来は、まるでSF映画のような世界になるかもしれない。AIがさらに知能の高いAIを生み出し、技術の発展スピードが止まらなくなる。さらに人間はサイボーグ化されて、人間と機械とのはっきりとした区別がなくなっているのではないか、という予測もある。本当にそんな未来が来るのだろうか、20年後が待ち遠しい。

AI+クラウドで2025年問題を迎え撃つ

変化していく社会に合わせクラウド導入などを進める上で、より生産性の向上を目指すことができる方法がある。それはAIと組み合わせることである。

AI+クラウド、通称AIクラウドは、AIの機能を搭載している進化したクラウドサービスだ。画像認識、音声認識、顔認識などのAI技術を活用しているサービスがすでに提供されている。紙の請求書をスキャンするだけでAIが請求書情報をテキスト化し、これまでデータを手入力していた時間を大幅に削減ができたという導入成功例がある。

AIができることはAIに任せることで、人間側にはその他の業務に取り組める人員や時間が生まれる。最適なクラウドやAIを使うことにより、人手不足にも対応していけるだろう。

人口減少という波にあらがうことは企業のレベルでは難しいと思われがちであったが、先手を打つことで乗りこなすこともできる。早急にクラウド化やDX化に着手することが事業にプラスに働くことは間違いないだろう。

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