疎いままでは大きなリスクを背負う、社内のITリテラシーを高めよう

近年、IT化が進み、業務に関わるツールは多様化している。しかし社員のITリテラシーが低かったことで「情報漏洩」や「SNSでの炎上」が起こるニュースを度々耳にすることはないだろうか。今回は、社内のITに対する意識を高めていく方法について紹介していこう。

2019.11.14 THU

疎いままでは大きなリスクを背負う、社内のITリテラシーを高めよう

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ITリテラシーの意味とは

まず、ITリテラシーとは、通信・ネットワーク・セキュリティなどの情報技術を自分の目的に合わせて使うことができる能力を意味する。情報技術を意味するIT(Information Technology)と、文字の読み書きという意味から転じて、現代では「適切に理解・解釈・分析し、改めて記述・表現する」を意味するようになったリテラシー(Literacy)を組み合わせた言葉だ。必ずしもコンピュータと直結するものではなく、マウスやキーボードなどの単純なパソコンの操作やアプリケーションの操作も含まれる。

ITリテラシーには大きく分けて3つの要素で構成されている。

⑴ネットリテラシー
インターネットリテラシーを短縮した言葉。インターネットの利用時に情報や出来事を正しく理解して、マナーなどにも通じ、適切に判断し使いこなすための知識や能力を指す。

⑵情報リテラシー
インターネットだけでなく、メディアなどから自分の必要な情報を探しだす能力、正しい情報であるかを精査する能力、情報を適切に活用する能力を指す。インターネットの発展により膨大な情報が手に入るようになった今、重要性が高まってきた

⑶コンピューターリテラシー
コンピュータを使って目的としている作業を行い、必要な情報を得るための知識や能力を指す。マウスやキーボードなどの機器の扱い方から、電子メールやワードでの文章作成における文字入力まで基本的な操作方法も含む。

このように総合的なIT情報の活用能力をITリテラシーと言う。

ITリテラシーの欠如に年代は関係ない

海外と比べて日本人はITリテラシーが低いと言われる。「ITとか苦手なんだよね」と、スマートフォンやパソコンの操作はあまり得意としない上司は周りにいないだろうか。「ITは仕事をする上でのツールにすぎないのだから、疎くてもたいしたことない」と思っている人は残念ながら未だにいるだろう。

しかし、ITリテラシーが低いのはスマートフォンに慣れ、使いこなしているように思える若い社員も同じだ。1990年代半ば以降に生まれたデジタルネイティブ世代とよばれるこの世代の若者たちは、物心のついたころからインターネットに触れている。常にインターネットが身近にあるため、その危険性への認識が薄れがちなのだ。

ITリテラシーの低さが招くトラブル

ウイルスに感染、画面の覗き見で情報漏えい
知識がなかったがゆえに、取引先を装ったスパムメールの添付ファイルをダウンロードしたり、URLリンクをクリックしたり、会社名義のスマホやパソコンに、勝手にアプリケーションをインストールしたりしてしまう。それによりコンピュータウイルスの感染を始めとしたサイバー攻撃を受け、外部から会社のシステムに侵入される事態になってしまう。

IDやパスワードを忘れないようにと初期設定のままや簡単な内容にしてはいないだろうか。利用する端末のセキュリティレベルが低いものだった場合、簡単に不正にログインされ情報を盗み出されてしまうリスクがある。

また、パソコンの画面を開いたまま側を離れるのはもってのほか。社外ではもちろん、社内のオープンスペースや自分のデスクでも席を立つときには画面を閉じる事、ロックをかける事は基本的なマナーだが、しっかりと守られているだろうか。ほんの一瞬であっても覗き見できる隙を作ってしまうと、個人情報を含んだ情報の漏洩が起こる危険性が高まる。

企業ブログ、SNSでの炎上
近年、TwitterやInstagramなどのSNSは企業PRに大きな役割を果たすようになった。SNSで「企業の公式アカウント」を持ち運営する。SNSは拡散力が強く、「バズる」(話題になる)と一気に日本中、世界中にまで情報は広がっていく。顧客との距離も近いため、ユーザーの声を直に聞きく事ができる。

その一方、SNSでは毎日のように何かが批判にさらされて「炎上」している。企業が炎上を起こしてしまうとイメージダウンだけでなく、商品の不買運動にまでつながってしまうなど、大きなダメージを受けてしまう。

企業の公式アカウントでは「企業として不適切、非常識な投稿」や「誤爆」が炎上の火種になることがほとんどだ。SNS担当者のITリテラシーが低かったことが根本にあり、ちょっとしたことがきっかけで不適切な発言や対応をしてしまい、炎上トラブルに発展するようなケースが多いい。

社員のITリテラシーの低さによる、ずさんな管理体制がこのような事態を引き起こすのだ。

ITリテラシーの向上がもたらすメリット

では前述と反対に社員のITリテラシーが高まるとどうなるのか。下記の様なメリットが生まれるだろう。

ITを使用する業務の生産性向上
パソコンやスマートフォンなどの業務で使うIT機器を使いこなすスキルが高いほど業務の生産性は向上する。例えば資料を作成する際に、パソコンのショートカットキーやOfficeアプリケーションの小技を使用できるかできないかの差は大きい。コツを熟知していることで作業スピードが上がり、業務の生産性も向上するだろう。

情報収集の効率化
インターネット関するリテラシーが高ければ、仕事に必要な正確な情報を効率良く得ることができる。検索結果からも、どのサイトの情報が信頼できるかすばやく見分けることが可能だ。正しい情報が早く探せる事で、こちらも仕事の資料や報告書などを作成するスピードが上がるだろう。

セキュリティに対する意識の向上と強化
セキュリティ上に問題があるかどうか危険性を考えながらインターネットやメール、その他アプリケーションを使えるようになる。自分のパソコンやスマホ、そのIDやパスワードを社員一人ひとりが責任を持ってしっかりと管理できるようになれば、自然と会社全体のセキュリティの強化に直結していくだろう。

SNS等での炎上を未然に防ぐ
SNSの活用方法、ネットコミュニケーションのモラル・マナーが身についていれば、ネット上での不祥事も防げるだろう。担当者は、企業を代表してSNSの運用をしていることの自覚をもって、企業に有益となる情報を発信していくことができる。

社内のITリテラシーを高めるためには

では、具体的にどのような方法でITに対する意識を高めていくか。

ITリテラシー研修を行う
一般的に新人研修の中ではITリテラシーについてのプログラムが組み込まれることは多い。しかし、今日では新人だけでなく従業員全員に対して十分な研修を行う機会が必要である。部門や役職ごとに内容に変えて、業務内容に合った研修の場を設けるのも効果的だろう。

サイバー攻撃の手法に至っては、日々新たな手口が生み出されているため、定期的に研修を実施することが望ましい。外部のセミナーも利用してセキュリティやSNSについて専門家の話を聞き、社内で共有するのも良い。従業員一人ひとりが会社の安全を確保する上で、重要な役割を担っていることを再認識することで社内のITリテラシーは高まっていくだろう。

ナレッジシェアリングを行う
ナレッジシェアリングとは、知識を獲得し創造する、そして蓄積した知識を活用していくという知識循環の仕組みであり、メールやSNSなどのネットワークを利用し、知識を共有したり疑問の答えを得たりする事を指す。これは先に述べたデジタルネイティブ世代において習慣化されており、得意としているマネジメント方法である。企業内ではグループウェアなどを利用して、それぞれの部署内で持っている知識や経験などの情報を、全社で共有することで問題の早期解決を図ることができるだろう。

仕事にかかわるIT機器やシステム、ツールを正しく使いこなせる社員が増えていくと、業務の生産性は確実に向上する。IT化が進むこれからの社会の追い風に乗っていくためにも、ITリテラシーについて社内で広く周知を図り、理解を促進していこう。

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