IT化が進んで久しい現代においての企業経営では、業務の効率化のためのシステムの利用は欠かせない。いかにして自社にあったシステムを導入するかの判断が、これからの社運を左右する可能性がある。しかし社内のIT化を提案するプレゼンを行っても、なかなか上層部に理解されないケースもあると聞く。そんな時どのように説得したらよいのだろうか。
現場で業務をこなしている社員ほど、「ここをIT化したら便利なのに」という提案が浮かぶ事が多いだろう。しかし、システム導入を決断するトップや経営陣は現場の状況を感じづらいものだ。そのうえITリテラシーが低いとITの活用イメージが沸かず、コストや運用の手間を理由にシステム導入を却下することも多いという。
IT化に否定的な上司の中には、以下の様なタイプがいる。
・頑固な嫌悪型
・変化を求めない保守型
・そもそも興味がない無関心型
いずれにしても、そう簡単に提案を飲んでもらえないことはわかるだろう。IT化によって、大きな変化を余儀なくされる部門は必ずある。人間は基本的に変化を嫌う生き物だ。社内に複数の抵抗勢力が出てくるのはごく自然な流れである。
一見バラバラにも見える上記のタイプには共通点がある。それは“ITについての十分な知識がない”ことだ。嫌悪型や無関心型に至ってはほとんど無知である可能性もある。「よくわからないがシステムを使うと自分の負担を増やしそうだ」というような、ITに対して理解がないまま、なんとなく悪いイメージを持っている事も少なくない。
これは言い換えればチャンスである。システムの導入が会社にとってプラスになることをしっかりと伝えられれば、IT化に「反対」から「賛成」に意見を変える可能性があるのだ。
では、上司たちに向けた効果的なプレゼンの流れとポイントを紹介する。
1. 課題を示す
導入の目的・理由を明確にする。現在の業務フローではどこに問題があるのか課題を整理する。
ミスが起こりやすい、無駄な時間がかかっている、など。
2. システム導入による改善を明確にする
結果が数値化されているとより有効的だ。
・導入によって、見込み客の数が1.5倍になった
・営業の生産性が30%向上した
上記のように業務効率化の効果を他社事例等を参考に可視化しよう。また、導入が成功した事例があると上司の関心を引きつけることもできるので、自社に近い導入事例を入手できると尚よい。
3. 導入プランを見せる
1、2と同時に導入プランとスケジュールを示すのもポイントだ。あくまでも導入するつもりで、先を読んで情報収集しておこう。
また、ここでは費用対効果についても報告しよう。費用対効果とは、導入や運用にかかるコストと、導入により得られる効果を金額ベースで比較したものだ。事前に算出した費用対効果を基に導入すべきかどうかの判断をしたり、また導入後のレビューをし、効果がどれくらいあったのかを実データを基に検証したりする際に用いられる。効果が費用を上回っていれば上司も納得してくれるだろう。
4. 複数パターンを用意する
導入したいシステムやプランを複数用意するのも重要だ。上司の立場に立ってみると、選択肢が他に無い状況で選んだものと、複数の選択肢から選んだものでは、たとえ内容が同じであったとしても、意思決定をする人にとってはまったくの別物に映る。他との比較がなされていない提案は偏った選び方をしているとみなされて、却下される可能性も高い。必ず複数案から最適案を選ぶ形を取ろう。
否定的なタイプの上司はシステム導入を経験していない、食わず嫌いである事が多い。難しい専門用語はわかりやすい言葉に変えたり、解説をいれたりと工夫をしてITの知識がない人にも伝わりやすい説明をするよう心掛けよう。
ここからは、IT化により前向きな気持ちになれるような情報をご紹介する。上司への説明の中に盛り込んでいこう。
国や専門家の力を借りる
業種や職種、企業規模や運用によって必要とされるツールやシステムは変わってくるものの、困りごとを中心に専門家へ相談したり、情報収集をしたりすることで解決策は見つけられる。
実際、経済産業省や中小企業庁、帝国データバンクなどの調査資料等によれば、IT投資を積極的に行っている企業と、そうでない企業の場合では、IT投資を行っている企業の方が業績は高くなる傾向にあるという。先延ばしせずに、検討してみる価値はあるだろう。
経済産業省などが行っている中小企業に向けたIT導入補助施策もある。これは、自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を国が補助することで、中小企業の業務効率化・生産性向上・売上アップをサポートする制度だ。
補助対象の企業になると受けられる補助率は50%、最大450万円の補助金が交付されるという。ソフトウェアの購入だけでなく、クラウドサービス利用料、初期費用、研修を行った際の専門家費用、保守・サービス費用、セキュリティ対策費までもが活用対象になる。
IT導入支援事業者によってあらかじめ決められたITツールの中から自社に合うものを選ぶことが条件にもなっているが、導入に関わる費用を通常の半額にできる事はコスト面がネックだとする上司の説得において大きな後押しになるだろう。
困りごとや課題がない場合でも
IT導入への投資を行うことが、企業の業務効率化に効果を発揮し、ひいては、業績アップへ繋がると伝えてきた。しかし、現状で業務が回って売り上げが立っている状況では、あえてITを導入せずとも、このまま進行していけば、問題ないと考えている上司もいるのではないだろうか。
ITを使った解決がオススメできるシーンとして、実際に現場の業務が雑多で苦しんでいる場合はもちろん、現状は困っていないという場合でも、IT導入の効果は期待できる事をアピールしよう。
ITの導入は、課題解決により業務効率を上げるだけでなく、改善策として業績を上げたコスト削減果にも繋がる。
例えば、稟議申請から決裁までの流れをスムーズにするITツールを導入したとする。これまで手動で管理していた書類の準備や関係部門への承認作業といった流れを、システム上で一括管理をするだけでなく、進捗チェックや書類管理などもまとめてできるようになる。
それにより記入漏れや書類の紛失等の人為的ミスが起こる可能性が下がり、申請書類などがペーパーレス化されることによって保管場所や、印刷、用紙にかかっていたコストの削減までが叶うのだ。
現在スムーズに流れている業務こそ、そのままITへ置き換えできるケースもある。更なる業績向上を目指している上司へ向けて、一度業務の見直しをしてみることを勧めてみるのも良いだろう。
IT化へ否定的な上司を説得するため、様々な課題をクリアしていくことは簡単なことではないだろう。しかし、これからの日本を生き抜くためにはITへの投資は避けて通れない。まずは自社業務に効果が期待できるシステムの情報収集や、多くの事例を持つ専門会社への相談といった、自分のできるところから始めていこう。
そして、十分に資料が集まったら、プレゼンを行う。課題を示し、導入による効果を数値化して明確に伝える。導入プラン候補も複数用意し、リスクやデメリットも含め検討済みであることをしっかりと伝え、説得を成功させよう。