クラウドの基礎知識(1)‐クラウドとは-

クラウドの意味するものをどのくらいご存知だろうか。クラウドなんてよくわからない、自分は使っていないから関係ないと思う人もいるかもしれない。しかし、クラウドは既に私たちの生活とは切り離せないものになっているのだ。これから3回の記事に分けてクラウドについて説明していく。

2019.12.05 THU

クラウドの基礎知識(1)‐クラウドとは-

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そもそもクラウドとは

クラウド(cloud)の英訳は「雲」だが、コンピュータの世界の「クラウド」は、「クラウドコンピューティング」という言葉を略したものを指している。

「クラウドコンピューティング」という言葉自体は、Googleの最高経営責任者のエリック・シュミット氏が2006年にアメリカ・カリフォルニアで開かれた会議で行ったこのスピーチから生まれたとされている。

“ブラウザの種類も、アクセス手段も、パソコンかマックか、携帯電話かも無関係です。雲(cloud)のような、巨大なインターネットにアクセスすれば、その利益、恵みの雨を受けられる時代になっています”

「雲のように大きなサーバからデータを取り出す」というイメージだろうか。インターネットにつながった全てのコンピュータを自分のものとして活用できるようになると述べているのだ。

現在での「クラウドコンピューティング」とは、インターネットなどのネットワークを経由して、ソフトウェアやシステムを遠隔から利用できるコンピュータ利用形態の事である。

例えば自分のPCに入っているソフトウェア(ExcelやWord等)を使ってデータを作成し、完成したデータも自分のPCの中に保存していたものが、「クラウドコンピューティング」では、ソフトウェアやデータの一部が自分のPCの中ではなく、ネットワーク上、つまり「クラウド」上に存在するようになる。

つまり作成したデータはネットワークでつながった先に保存することができるのだ。



クラウドはいつ頃から発達したのか

クラウドが注目され始めたのは今から10年ほど前だ。前述の通り、PCやシステム、特に会社の業務に使用するソフトウェアの多くはクラウドではなかった。

データは自分のPCの中で保管し、PCに届いたメールは携帯では確認できなかった。しかしインターネットと、携帯電話会社が提供する回線の環境が整備されたことで、クラウドが実現し企業や一般ユーザが使用できるようになり、急速に広まったのである。

日常生活の中で既にクラウドサービスを利用している

ネットワーク上のどこかにデータが保存されている…なんとなくピンとこない人もいるだろう。私たちに馴染みのある具体的なクラウドサービスの例を紹介する。

Webメール
「Gmail」や「Yahoo!メール」などのWebメールはメールソフトが必要なく、アカウントを作成してブラウザMicrosoft Edge,ChromeやSafari)で利用できる。インターネットに接続できる環境があれば、外出先からでもスマートフォンでメールを読んだり送ったりすることが可能だ。端末自体にはメールデータを保存しないため、アカウントにログインができればどの端末でも同じメールを確認できる。

Googleスプレッドシート
GoogleアカウントがあればPCだけではなく、スマートフォンやタブレットからでも使用可能。Excelと同じように関数や数式、グラフの制作もできる。URLを共有することにより複数人でシート閲覧・編集できるのも便利な点だ。

クラウドストレージ
iCloudはAppleが、Google DriveはGoogleが提供するクラウドストレージサービスだ。クラウドストレージは、「インターネット上に作った自分だけのデータ保管場所」をイメージして欲しい。

例えばスマートフォンで撮影した写真などは、スマートフォン本体に保存し続けると、いずれ容量がいっぱいになって新しい写真の保存ができなくなる。そこでクラウド上にある保存場所に写真データを保管して、スマートフォン本体の容量を節約するという使い方ができる。

これによりパソコン、スマートフォン、タブレットなど様々な端末からアクセスすることができるため、データの一元管理に役立つ。

さらに常時バックアップを取っておくことで、スマートフォンが故障した際にデータが消失する事を防げる。自分の手元にある端末の中以外にもデータが保存されている場所があるというのは、とても安心できるだろう。

新しいスマートフォンに買い替えてデータの移行をするのも簡単にできる。新しい端末から既存のiCloudやGoogle Driveにログインするだけで、電話帳やホーム画面のすべてのアプリまで復元されるのだ。

YouTube
忘れがちだが、Youtubeもクラウド上のサービスである。パソコンなどの端末に動画を保存しなくても、何十億もの動画をどこでも好きなときに見ることができる。まさにクラウドの発達によって実現しているサービスだ。

このように私たちが意識していないところでも、生活の中で自然とクラウドを使用しているのである。

クラウドのデータはデータセンターへ保存される

クラウドで保存したデータはネットワークでつながった先に保存されると述べたが、サーバが不要になるのはユーザ側であって、サービス提供者側はもちろんデータを保存、管理する物理サーバを持っている。

それが「データセンター」。サーバやデータ通信・ネットワーク装置などを、設置・運用することに特化した施設である。自社でサーバを持っている企業は、サーバールームが同じものにあたる。

また、既出のiCloudやGoogle Driveといった大規模クラウドサービスの運営も巨大なデータセンターが担っている。大量のプログラムを高速に並列処理でき、24時間365日安定して電力供給や温度管理が行えるのは、データセンターをおいて他にない。Googleの心臓部とも呼べるデータセンターの様子はこのようになっている。

厳重なセキュリティに守られたデータセンターの中には大量のサーバーラックが並んでいるのがわかるだろう。複数の専門家が24時間の交代制でトラブルに対応する体制が取られており、ユーザに快適なサービスを提供するためのメンテナンスが日々行われている。

また、データセンターには下記の様なポイントがある。

自社でかかるコストを抑える
機器の管理に適した温度や湿度が365日24時間体制で管理されているため、自社で管理する場合に必要なスペースや人員の確保、熱対策等の設備の維持にかかるコストを抑えることが可能。

安定した継続稼働
IT機器の専門家が常駐しているため、障害が発生したときも迅速に対応し、短時間での復旧が期待できる。

セキュリティ対策
ユーザの情報保護のため、入退館時の厳しいチェックや監視カメラ設置など、万全の警備体制がとられている。

災害・火災対策
データセンターは災害に弱い立地を避けた場所に、耐震構造を備えた建物として建てられるなど、地震や火事などの予期しない災害から企業のITシステムを守るための自然災害対策がとられている。停電などでIT機器の稼動がストップしてしまわないように、自家発電や燃料も装備されている。

このように安心・安全に運営するために様々な対策がとられているのである。

今回はクラウドがどんなものであるか、実際にどう使われているのか、その仕組みについて紹介した。次回はクラウドの種類について深めていく。

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