人のものを無断で使うという行為は、ネット上でもそれ以外でも、モラルやマナー以前に、犯罪となるケースが多い。ネットで気軽に他人の写真や記事を流用して、トラブルになることも。個人のHPやブログだけでなく、大手メディアが他サイトの記事から写真までを丸々盗用していた事例もある。いわゆる“パクリ”である。そんな事態に陥らないよう、ネット上著作権侵害について学ぼう。
著作権とは創作品を守る権利である。主に小説・絵画・イラストなどの著作物が違法に使用されないように保護するために存在している。基本的に、ネット上にアップロードされた画像や文章にはすべて著作権があるため、著作権者に無断で転載してはいけない。ただ、そんな中でも2つの例外がある。
まず1つ目が「私的複製」だ。ネットで見つけた写真やイラスト、合法的にアップロードされた音楽や映像なども個人的に楽しむためにダウンロードする分には問題ない。ただし、それらをネット上にアップロードした時点で、私的複製の範囲を超えることになり、著作権上は違法になる。ネット上に載せるということは、世界中にその内容が発信されることになり、個人で楽しむという範囲には収まらなくなる。これはホームページ、ブログやSNSにおいても同じ事である。
最近では「漫画村」と呼ばれるサイトが問題になった。このサイトでは2016年1月から違法コピーされた漫画や小説、雑誌などを無断で転載し、無料で公開していた。2018年2月に国会で著作権に関する違法性を取り上げられ、これに対する緊急対策案が発表されるなど大きな社会現象を引き起こした。運営者は海外へ逃亡後、現地で拘束されて日本へ強制送還。その後、著作権法違反で逮捕された。
上記以外にも、違法行為とみなされる行為を紹介する。
・ブログなどに歌詞を載せる
楽曲の歌詞の著作権はJASRAC(日本音楽著作権協会)によって管理されている。複製するためにはJASRACの許可が必要になる。
・キャラクターを勝手に使用する
実はキャラクターには著作権がないことをご存知だろうか。前述の通り著作権法上では小説、漫画、イラスト、楽曲などが主な保護対象と定義されている。キャラクターに自体ではなく「キャラクターが登場するイラスト」などに対して著作権が生じるのだ。この場合、キャラクターを守るために商標登録が行われている。(模倣された場合でも商標登録をしていることで、既存のキャラクターが模倣作品より前に存在したことを証明できる)
・他人の撮った写真を使用する
一般ユーザーが投稿した写真などはもちろん、SNS上ではよく、自分の好きな芸能人の画像をアイコンに使用している人がいる。だが、元の画像は写真を撮影した人の著作物となっている。よってこれは著作権違反と、写っている人の肖像権の侵害にもなるのだ。以前、某アーティストがファンに向けて「みんなやっているから良いのではなく法律的には違法な行為になる。自分の画像をアイコンに使用しないで欲しい」と発言し、話題になった事もある。
そして例外の2つ目は「引用」だ。文章に限らず写真・図表などあらゆる著作物が対象となる。正しい引用の定義として、文化庁の著作権法では次のように定められている。
「公表された著作物は,引用して利用することができる。この場合において,その引用は,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲で行なわれるものでなければならない。(著作権法第32条)」その「引用の目的上正当な範囲」とは、以下の4点となる。
⑴他人の著作物を引用する必然性があること
これは、「その引用をすることで、説明がわかりやすくなる」などの理由がある場合を指す。例えばネット上である美術品を講評するのに、文章だけでは読んでいる人にどういった美術品なのか伝わらないことがある。そういった場合は美術品についての引用が必要になる。
⑵かぎ括弧をつけるなど、自分の著作物と引用部分とが区別されていること
引用部分を“”や「」ではさんだり、文字を太字にしたり色を変えることで一目ではっきりとわかりやすくする。自分の書いた文章と混在しないようにする必要がある。
⑶自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること
引用する際には自分の書いた文章のほうが引用部分より圧倒的に多いことが条件となる。自分の著作物が主体になるということだ。引用はあくまで部分的でないとならない。
⑷出所の明示がなされていること
出所の明示にあたっては、原則として著作者名を示す必要がある。引用した著作物の題名、著作者名、ページ、ネット上の記事の場合は参照元のURLを記載する。
以上の4大条件以外にも、違法となるケースはあり、その判断が難しい場合も多くある。また上記の通り引用は、一定のルールを守れば著作者から許可を得ることなく著作物の利用をすることができるが、転載は、著作者からの許可がある場合しか行えない。著作者に無断で転載行為を行うことは許されないのだ。いかなる場合でも著作権侵害にならないか慎重に確認をしなければいけないが、これらは見極めが難しく、個人の判断では後から大きな問題になることがある。やはり著作権者に問い合わせるのが一番確実である。
ネット上には「フリー素材」といわれる写真や画像・イラストが多く公開されている。“フリー”という響きから、誰でも自由に使っていいようにも思えるが、実はそうではない。フリー素材のなかには、実は著作権が放棄されているとは限らない場合もある。
たとえば、国内最大規模の写真素材サイト『ぱくたそ』の利用規約には、「商用利用可能だが、商品化可能ではない」「モデルリリース取得済みのモデルの名前を変更して表記するのは不可」など、詳細な規約が記載されている。残念ながら、いまだにネット上の写真は無料で自由に利用できると間違った考えをもっている人が一定数いるのが現実だ。フリー素材を使用する際にも、やはり著作権のトラブル防止のために、それぞれのサイト、写真に付けられたライセンスをしっかり確認しよう。
近年はソーシャルメディア、特にTwitterやInstagram等のSNSの発達が著しい。Instagramにいたっては全世界のユーザー数が2019年8月19日時点で10億人を突破した。誰もが気軽に写真や文章の投稿を行えることで、ネット上のルールに対しての未熟さがまねくトラブルも多く見受けられるようになった。そもそも転載や盗用が違法であることを知らないため、気軽に犯罪につながる行為を行ってしまう。これは若い学生から大人まで、年齢など関係なく起こりがちだ。
これに対する対策として、学校の授業の中ではネット上の著作権やルールを取り上げる時間がとられるようになった。またコミュニケーションアプリの「LINE」を提供するLINE株式会社は、全国の学校で学生が情報モラルを年齢に応じて学習できる教育教材「SNSノート」を開発して提供し、若い世代のネットマナー向上促進を促している。大人に向けてのネットのルールとマナーについての書籍も多く出版されているので、一度手に取ってみることをおすすめする。
ネットの普及によって、誰もが気軽に情報を発信できるようになった便利な時代だからこそ、今一度、その情報の扱い方については意識する必要がある。 “他人のものを勝手に使わない”という常識を持ってルールを守ること、そして、あわせて専門家に相談することもおすすめしたい。
参考サイト:文化庁 著作権制度の概要http://www.bunka.go.jp/seisaku...
公益社団法人著作権情報センターhttp://www.cric.or.jp/